東京地方裁判所 昭和41年(ワ)7323号 判決 1966年9月14日
原告 株式会社ソルジン製作所
被告 新和電機株式会社
主文
被告は原告に対し金二〇万円およびこれに対する昭和四一年八月一九日以降右完済まで年六分の割合による金員の支払をせよ。
原告その余の請求を棄却する。
訴訟費用は被告の負担とする。
この判決はかりに執行することができる。
事実
原告は、「被告は原告に対し金二〇万円およびこれに対する昭和四一年三月二七日以降右完済まで年六分の割合による金員の支払をせよ。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求め、請求の原因として、<省略>原告は次の約束手形一通の所持人である。
金額 二〇万円
満期 昭和四一年三月二六日
支払地 東京都台東区
支払場所 住友銀行中村橋支店
振出地 東京都千代田区
振出日 昭和四〇年九月一日
振出人 被告
受取人兼裏書人 株式会社ソルジン本舗
被裏書人 (白地)
原告は右手形を支払期日に支払場所に支払のため呈示した。
よって、原告は被告に対し右手形金およびこれに対する昭和四一年三月二七日(呈示の日)以降完済まで法定の年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。
被告は本件口頭弁論期日に出頭しないが陳述したものとみなすべき答弁書によれば「原告の請求を棄却する。」との判決を求め次のとおり答弁並びに抗弁をするというにある。
一、被告が訴外株式会社ソルジン本舗宛振出した約束手形は記載事項と一部相違がある。支払場所である住友銀行中村橋支店は支払地である台東区には存在しない。
二、被告は右ソルジン本舗に対し合計金七四万九五〇〇円の債権を有していたところ、同社倒産により、漸く一部を回収したがなお金一九万八六〇〇円の残債権がある。しかるところ、原告は右ソルジン本舗とは事実上同一会社であり唯製造と販売の部門を分離したに過ぎず、右ソルジン本舗の代表取締役は原告の専務取締役であり、若村弘は両者の常務取締役でしかも大株主も一名であるから、被告の右債権については原告も責に任ずるのが相当で本訴請求には応ぜられない。
原告は右抗弁に対し訴外会社と原告とは全然別個の会社で製造部門と販売部門を分離して組織されたものではない。会社役員が被告主張のとおりであった時期もあるが現在は被告主張の役員はいない。と述べた。<以下省略>
理由
一、被告は、本件約束手形はその支払地には、住友銀行中村橋支店が存在しないから被告振出の約束手形とは一部相違がある旨述べるのであるが、その趣旨は、明確ではないが、被告振出の約束手形は当初白地部分があり後に誤って補充せられたものであるとするならば、右事実についていかなる部分が白地であったかの主張も明白でなく、何らの立証もない。したがって甲第一号証(約束手形)の記載自体その他本件弁論の全趣旨を綜合すると、右約束手形が被告振出の約束手形と認定せざるを得ない本件においては、被告の右抗弁は、約束手形の手形要件に欠けるものであるとの趣旨と解する。しかしながら、支払場所として記載せられた金融機関が、支払地に存在しない場合その記載は無効であるが支払地の記載として東京都台東区なる適法の記載が存する以上右約束手形を無効とすべきでないから、本件約束手形は支払地を東京都台東区とする有効な約束手形と解する。
二、次に、被告は、株式会社ソルジン本舗に対する事由をもって原告に対する抗弁とするけれども右抗弁事実を認むべき立証ないのみならず主張自体原告に対抗し得べき事由とみることはできないから採用しがたい。
三、しかして、原告が本件手形を所持するものであること本件弁論の全趣旨により明らかであるが、支払場所の記載が被告の手によりなされたこと及びこれを前認定の支払地において支払のため呈示したことの主張立証はない(住友銀行中村橋支店は東京都練馬区にあって同都台東区には存しないこと当裁判所に顕著である。)から本訴提起により支払のため呈示されたものというべきである。しからば、本件手形金およびこれに対する本訴状送達の日の翌日であること記録上明白な、昭和四一年八月一九日以降年六分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において本訴請求を認容すべきもその余は失当としてこれを棄却すべきである。<以下省略>。